第1章 大きな一歩*伊月*
「…う…ん…。」
目を開けると、旅館の部屋の天井が見えた。
「名前ちゃん、目が覚めた?」
リコ先輩がちょうど部屋に入ってきた。
「良かった!顔色良くなってるわね。軽い熱中症と貧血だって。水分多めにとって、休んでいれば大丈夫よ。」
「リコ先輩、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。」
自分が足を引っ張ってしまった。
役に立ちたいのに…。
ぎゅうっと胸が苦しくなった。
「迷惑だなんて思っていないわ。だけど、すごーく心配した!今日はもう皆戻ってきてるから、具合良くなったら外に来て!」
そう告げると、リコ先輩は足早に去っていった。
部屋の外から話し声が聞こえた。
「苗字、入るよ。」
心地よい優しい声。