第51章 頑張りすぎる君だから*伊月*
風呂も済ませ、そろそろ30分が経とうとしていた時。
時間を気にするように、呼び鈴が控えめに鳴った。
扉を開くと、今にも泣き出しそうな顔をした名前が立っていた。
その瞬間、彼女は俺に飛び付くように抱き付いた。
涙を隠すように胸に顔を埋める。
俺がいることを確かめるように少し硬く背中に腕を回す。
「名前、おかえり。…お疲れ様。」
優しく彼女の腰に腕を回し、片手でよしよしと頭を撫でてやる。
「俊くん…。」
彼女は安心したのか、胸元からすすり泣く声が聞こえてきた。
「よく頑張ったな。」
ぽんぽんと心地よいリズムで背中を叩くと、少しずつ彼女は落ち着いてきて腕の力が緩まった。
それからすぅっと俺の香りを吸い込んで、深呼吸のように一つ溜め息をついた。
「とりあえず上がりな。ご飯食べるか?」
「…ううん。」
「じゃあ、ゆっくりお風呂入っておいで。温まってるから。」
「うん。」
目を赤くしながらも、少し表情を綻ばせる名前を見て少し安心した。