第46章 9月11日*小金井*
「小金井くん!」
私は渡り廊下から身を乗り出し、聞こえるくらいの大きな声で彼の名前を呼んだ。
「苗字!?まだ残ってたの!?」
「今からそっち行くから待ってて!」
私は急いで階段を駆け下り、彼のもとへ向かった。
「…あれ?水戸部くんは?」
体育館前に辿り着くと、そこにいたのは小金井くんだけだった。
「水戸部先に行くねって…。…苗字今日も居残り?」
「ううん、小金井くん待ってた。…お誕生日おめでとう!」
私はプレゼントを彼に手渡した。
「うわー!ありがとう!!開けていい?」
私が頷くと、彼は箱の中身を見て驚いた。
「バウムクーヘンじゃん!!俺の大好物!!ありがとう!嬉しい!」
喜ぶ彼の顔を見て、ほっと肩を撫で下ろす。
だけど、もう一歩はやっぱり踏み出せなかった。
「喜んでもらえてよかった!…ごめん、水戸部くん待たせちゃってるよね?それじゃ、また明日ね!」
踵を返し、校門の方へ向かおうとした。
「待って!」
彼の一声で、私の歩みが止まった。