第46章 9月11日*小金井*
9月11日の朝。
教室に向かうため廊下を歩いていると、あの元気な足音がどんどん近付いてきた。
「苗字おはよー!」
彼が少し息を切らして私の横に並んだ。
「あ、小金井くんおはよう!朝練お疲れ様ー。」
「今日一段ときつかったんだよー!今日俺の誕生日なのにひどくない!?」
………ん?
誕生日って!!??
「そ、そうなんだー。お、おめでとう!!」
彼が今日誕生日という衝撃で、私はとりあえず「おめでとう」と伝えるだけで精一杯だった。
彼と一緒に教室に入った後、トイレに行くふりをして廊下へ飛び出した。
「どうしよう………。」
私、好きな人の誕生日知らないとかだめすぎる。
やっぱりいつもみたいにタイミングが合わないのか、うまくいかない。
すると、背中をとんとんと突かれた。
後ろを振り返ると、水戸部くんが立っていた。
「…水戸部くん?どうしたの?」
すると、一切れのメモをそっと私に差し出した。
「コガはバウムクーヘンが好きだよ。」
メモに書かれた文字を見て、私はすぐに彼が私の気持ちに気付いていることを察知した。
ずっと小金井くん見てたし、近付きたくて話しかけに行ってたし。
いつも隣にいる水戸部くんにはバレバレだったんだろうな。
とてつもなく恥ずかしくてメモを見た状態から顔を上げられない。
すると、大きな手に肩をぽんと叩かれた。
恐る恐る顔を上げると、水戸部くんが柔らかく微笑んでいた。