第1章 大きな一歩*伊月*
昼間は浜辺で練習。
夕方からは体育館で練習。
殺人的なメニューを必死でこなしたため、皆いつも以上によくご飯を食べている。
「苗字、カレーおかわり!」
「火神おかわり何杯目だよ…。」
「付け合わせにゆで卵があるのは嬉しいです。」
「いやー…ほんと苗字いて良かったー!」
「…(コクッ)。」
夕食後も明日の朝食の下ごしらえや後片付けに追われていた。
途中まではリコ先輩が手伝ってくれていたが、日向先輩に呼ばれて行ってしまった。
何とか目処がつき、ふーっと一息ついて腰掛けた。
「苗字、お疲れ様。」
振り向くとそこには伊月先輩。
はい、とジュースを手渡してくれた。
「ありがとうございます!」
自然と顔が綻んでしまう。
顔、赤くなってないかな。
「伊月先輩、体は大丈夫ですか?」
「明日が怖いな。筋肉痛だよ、絶対。」
何気ない会話でもわざわざ気にかけてくれたのが嬉しかった。
私、やっぱりこの人が好き。
こういうさりげない優しさにきゅんとする。
特別な存在にはなれないかな…。