第42章 カウントダウン*笠松*
笠松先輩が目標としていたIH優勝の夢は叶わなかった。
桐皇に敗れたあの日。
私は先輩がいないことに気が付き、控え室まで戻った。
すると、微かに泣いているような、悔いているような声が聞こえてきた。
中に入る空気ではなく、その場で立ち尽くした。
「…苗字、お前何で…。」
扉が開くと、目を赤くした笠松先輩が目を丸くして私を見つめた。
「…気持ちを全部わかることは正直私には難しいです。でも、その気持ちを分かち合うことは出来ると思うんです。」
「…悪い。」
「チームを、もちろんキャプテンを陰で支えるのがマネージャーです。」
「…そうだな。」
それ以上は何も言わなかった。
私は1年生の時も同じ光景を見ていたから。
涙を流して一人で悔やむ笠松先輩に、その時の私は声をかけることが出来なかった。
だから、せめて先輩が思いきり泣けるように、どんなことがあっても泣かないって決めた。
チームを、先輩を支えたいから。
今回が日本一になるラストチャンス。
明日はいよいよ、誠凛との準決勝。