第34章 キスまでの距離*紫原*
練習が終わり、皆で寮までの道を一緒に帰る。
敦はちょっとむくれてお菓子を食べていた。
「敦、ご機嫌ななめ?」
「別にー。あ、まいう棒の新味なかなかいけてるわ。」
お菓子に夢中になりながらも、私の手はぎゅっと握って離さない。
可愛いなって思って、ついついこのままの関係でもいいかなと考えてしまう。
いや!ダメでしょ!
私だって年頃の女の子だし、好きな人とキスをしたい。
寮に着き、男子寮と女子寮の建物の前で部員の皆と別れようとした。
「お疲れ様でした!それじゃあ失礼します。」
「また明日な!苗字!」
「ゆっくり休むアル。」
すると氷室先輩が企んだように微笑み私の方に向かってきた。
「Good night.」
その言葉と同時に頬に暖かくて柔らかいものが触れた。
唇を離し、先輩が耳元で囁いた。
「頑張ってね。」
すると、怒りに満ち溢れた状態の敦が氷室先輩の胸ぐらを掴んだ。
「いくら室ちんでも捻りつぶすよ?」
「アツシは物騒だなぁ。…俺は名前ちゃんにお願いされただけだけど?」
「はぁ?名前ちんに?」
敦がギロリと私を睨み、瞬く間に私の目の前に立ちはだかった。