第31章 不器用故に*花宮*
今日はいよいよ練習試合の日。
どうもソワソワしてしまう。
その時体育館の重い扉が開いた。
彼の纏う空気はやはり違う。
まこだ。
一瞬目が合って、目を見開いたけど、またすぐ反らされてしまった。
両校の挨拶の後に、今吉先輩とまこが何か話しているのが見えた。
彼とまともに会話したのはいつだろう。
先輩にすら嫉妬してしまう。
彼は中学の頃よりぐんとバスケにも磨きが掛かっていて、特にフローターシュートが格好よかった。
でも、試合は桐皇が終始優勢で、霧崎第一も食らい付くけどまた引き離されてしまう。
彼の悔しそうな表情に胸が締め付けられる。
結果は大差をつけての圧勝だった。
試合後、今吉先輩が私に近付いてくしゃっと頭を撫でた。
「いやー、名前ちゃんの応援効いたわ。」
私と目線を同じにするように顔を覗きこんできた。
「…先輩。なんか近くないですか?」
すると、誰かが私の腕をつかんだ。
「名前に気安く触るんじゃねぇよ、今吉さん。」
「まこ!」