第29章 図書室にて。/黒子*緑間
<緑間>
「全く…本くらいゆっくり読ませてほしいものだよ。」
騒々しさから逃れ、図書室に足を運んだ。
試験前だからか昼休みというのに生徒が普段より多く見られた。
ふと、本棚の前でつま先立ちになり手を伸ばす女子の姿が目についた。
辺りを見回すと、踏み台がなく他の生徒に使われていた。
そっとテーピングが巻かれた手を伸ばし、彼女の手の先にある本を取った。
190cmを越える自分の身長であれば、余裕で手が届いた。
「これか?」
彼女の方を見て驚いた。
「苗字!」
「緑間くん!ありがとうー!台無くて困ってたんだ。」
いつも毎日のように部活で顔を合わせている苗字だった。
普段隣に並ぶことがなかったから気付かなかった。
彼女が意外と身長が低いこと。
体つきが華奢であること。
ふわりと優しい香りがすること。