第28章 文化祭②/黄瀬*氷室*赤司
文化祭も無事に終了し、後夜祭の開始時間から少し過ぎていた。
全校生徒が続々と講堂に集合している。
軽音部の生演奏が会場内に響いている。
踊り始めている生徒もいれば、誘いをかけている生徒もいる。
逆に、男子に声をかけようか戸惑っている女子の姿も見られる。
名前はこういう目立った場所が得意ではない。
いるなら客観的にこの講堂を眺めていられる壁際。
ほら、いた。
友達に「いってらっしゃい」とでも告げて見送っている。
彼女の方へ向かうと、他のクラスの男子生徒が彼女に声をかけていた。
いてもたってもいられなくなり、彼女の名前を呼んだ。
「名前!」
彼女は僕を見つけると、強張っていた表情を柔らかくした。
「征ちゃん!」
すると、彼女は男子生徒に頭を下げ断る姿勢を見せた。
彼が去り、やっと彼女の前に立つことが出来た。
「…遅くなってすまなかった。僕と踊ってくれないか?」
彼女に左手を差しのべる。
「…喜んで。ずっと待ってたんだよ?」
花が咲いたようにぱっと微笑み、彼女は自分の手を重ねた。