第28章 文化祭②/黄瀬*氷室*赤司
「それじゃあ行こうか。」
彼女の手を握り、講堂の中央へと足を進めた。
「…征ちゃん、念のため聞くけどいいの?」
「何が?」
「だって、征ちゃんのこと狙ってる可愛い女の子たくさんいると思うよ?」
「愚問だな。僕は名前が好きだから一緒に踊りたい。ただそれだけだ。」
いつも気恥ずかしくて中々好意を言葉に出すことができなかった。
それだけで彼女は顔を赤らめ、小さく「嬉しい…」と噛み締めるように呟いた。
体を寄せ、左手と彼女の右手を重ね、彼女の腰に右手を添える。
音楽に合わせてステップを踏むと、初めてとは思えないほど息が合った。
「名前視線を合わせろ。ちゃんと僕の方を見るんだ。」
「…だって征ちゃんの方見るとまたドキドキするもん。」
そう言うと、彼女は恐る恐る顔を上げ僕の方を見つめた。
赤く上気した頬。
視線は少し泳ぎ、瞳を潤ませている。
「そういう顔は僕だけに見せてほしいものだね。」
あまりに僕の心を捕らえる表情を見せたものだから。
不意をつき、彼女の唇を盗んだ。
いつもより大胆になれたのは、文化祭というイベントのせいにしておこう。