第26章 教室にて。/高尾*今吉*水戸部
<水戸部>
4時間目の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
彼女に渡すものがある。
「水戸部くん!楽しみにしてたよ!」
苗字に布に包まれた箱を渡した。
「うわぁ!今日も美味しそう!!いただきます!」
蓋を開けた彼女は中を見て瞳を輝かせている。
そう。
毎週金曜日と毎月27日に彼女にお弁当を作ってあげている。
「うん!水戸部くん、この唐揚げ絶品!」
美味しそうに食べてくれるので、この笑顔を見られるだけでも作り甲斐がある。
きっかけは2ヶ月前。
「水戸部、苗字。今日日直だろ?職員室から資料を運ぶの手伝ってくれ。」
昼休みに入った時に担任から声をかけられ、二人で職員室に向かった。
手伝い終わった時には10分ほど過ぎていた。
「水戸部くん!あたし売店にパン買いに行くから!」
足早に去っていった彼女が教室に戻ってきた時、持っていたのはパックのジュースだけだった。
「名前、お昼買えなかったの!?」
「うー…今日27日だった…。忘れてた…。」
毎月27日は三大珍味を乗せたスペシャルパンが販売されるため、売店は戦場と化し長蛇の列が出来る。
かなり時間も過ぎていたので、彼女の友達は皆お昼ご飯を食べ終わってしまっていた。
俺は小金井の方に視線を向けた。
すると、彼はすぐに俺の気持ちを理解し、伝えてくれた。
「苗字!水戸部がお弁当少し分けてくれるって!」