第26章 教室にて。/高尾*今吉*水戸部
「えーか?授業で念押ししてたのはこの問題やろ?ここの練習問題よーさんやらせとったし。」
「うえー…あたしここ授業でやっても分からなかったのに…。」
苗字が苦虫を噛み潰したような顔で唸る。
「じゃあ解説したるで聞いといてな。」
そう言うと彼女が前のめりになるので、もっと距離が近付いた。
伏し目がちになって長い睫毛が際立つ。
自分と同じ黒髪だが、さらさらとしている。
肌は白く透き通っている。
「今吉?どうしたの?ボーッとして。」
あかんわ。見とれとった。
「すまんすまん。じゃあいくで。」
気を取り直して問題の解説を淡々と進める。
最初は難しい顔をして聞いていた苗字だが、段々と表情が明るくなっていった。
「…あ、そっか!わかった!今吉すごいね!先生になれるんじゃない?」
「ありがとさん。まぁ選択肢の一つには加えとこか。」
「教え方が上手すぎて、ついつい見とれちゃった。」
「まぁ…今のところは苗字にしか教える気あらへんな。」
「えっ!…それどういう意味?」
目を見開き顔を赤らめる苗字。
これはワシの予想も強ち間違ってないかもしれん。
「さーて、そろそろチャイム鳴るで?」
もう少し楽しませてもらいますわ。