第26章 教室にて。/高尾*今吉*水戸部
「苗字、ごめんけど教科書見せてくれね?忘れちゃったわ。」
「うん、いいよ。高尾が忘れ物するなんて珍しいね。」
「あー、違うクラスのやつに貸したまま忘れてた。」
そう言いながら、机をくっつけた。
忘れた、なんて嘘だけどね。
近付きたいからの口実に決まってる。
こうして近くにいると、色々目に入ってくる。
持ち物は淡い色が多いからパステルカラーが好きなんだろうな、とか。
ノートはきれいにとっていて、先生が言ったこともきちんとメモしている、とか。
「…次の文を苗字読んで。」
「…はっ、はいっ!え…っと…。」
「苗字ここから。」
教科書を指して当てられたところを教えてあげた。
苗字が読み終わり席についた。
「どしたの?聞いてないなんて珍しいじゃん。」
苗字の顔がその瞬間少し赤くなった。
「…いつもより近いから。」
俺の聞き間違いじゃなければ、近いから意識しすぎたってこと?
もしかして結構脈あるんじゃね?
「俺も気を付けないと、苗字に見とれて授業集中できねーわ。」
「…何言ってんの。」
そう言いつつも、顔さっきより赤くなってるぜー。
想いを告げるまで、あと少し。