第25章 香る。/実渕*氷室*火神
久しぶりの休日。
俺の部屋で二人でのんびりくつろいでいる。
本を読む俺の肩にもたれ、雑誌を読む名前。
彼女のシャンプーの香りがふわっと鼻を掠めた。
「名前はいつもいい匂いがするね。」
優しく彼女の髪に触れ、頭を撫でる。
「そうかな…。自分じゃ自分の匂い分からないからなぁ。…でも好きな人に自分の香り褒められるって嬉しいね。」
可愛らしい笑顔を浮かべて、俺にぎゅっと抱きついてきた。
「ねぇ、名前?何でいつも女性の香りにばかり反応するんだ?」
「え?そうだったんだ。無意識だったけど…。」
何か理由があると思ったけど、俺の思い違いだったかな。
「…辰也の匂いが一番好きだから、かも。」
彼女はどうやら恥ずかしいのか、俺と目線を合わさない。
「それは俺以外に興味ないってこと?」
俺の胸元に顔を埋めていた彼女を抱き上げ、目線を合わせた。
「…そうだよ。だって辰也以外の人に惹かれないもん。」
彼女は少し頬を赤らめて、でもしっかりと俺を見つめた。
「…ありがとう。そこまで名前を虜にする俺の香りってどんなものなの?」
「うーん…。難しいんだけど、ちょっと妖艶なんだけど、何故か落ち着く香り…かな?」
ちょっと矛盾しているようだけど、俺も君に対してそう思っているよ。
甘くて華やかだけど、何故か落ち着く君の香り。