第25章 香る。/実渕*氷室*火神
「お気に入りの香りがすると、気分上がるしね!」
手を口元から離すと、名前はえへっと可愛らしい笑顔を浮かべた。
「どんな香りなの?」
「匂いわかるかな…。」
そう言うと、私の方に自分の手の甲を向けてきた。
彼女の小さな手をとり、 鼻に近付けるとふわっと花のような柔らかな香りがした。
「あら…いい匂いね。優しくて、癒される香り。…名前にぴったりだわ。」
「…玲央。そんな恥ずかしいことさらっと言わないでよ…。」
彼女は顔を赤らめて俯いた。
「私は思ったことを言っただけよ?」
恥じらう名前が可愛くて。
私は彼女の手の甲を口元に近づけ、軽く口づけをした。
「玲央!もー…。」
「私も同じハンドクリーム使おうかしら。あなたとお揃いなんて嬉しいじゃない?」
「ほんと!?なんか嬉しいなぁ。」
「今度買いに行きましょう。じゃあ帰りましょうか。」
滑らかな彼女の手を握り、帰り道を歩く。
「こうやって玲央と手を繋げるんだから、少しでもきれいな手でいたいじゃない。」
あなただってそういう可愛いことさらりと言っちゃうんだから。