第25章 香る。/実渕*氷室*火神
<実渕>
練習後、部室棟の入口で待つ彼女を見つけた。
手にクリームをとり、両手を擦り合わせていた。
スベスベになった両手を見て、満足そうな表情を浮かべている。
「名前、お待たせ。」
「玲央!お疲れ様。」
「ハンドクリーム塗ってたの?」
「うん。あたしすぐ手がガサガサになっちゃうんだよね。」
マネージャーとしてバスケ部を支えている彼女。
水を使うことも多いし、ボールを磨けばやはり手が荒れてしまう。
「あと…」
そう続けると、彼女は自分の両手で鼻と口を覆った。
すうっと息を吸い込む音を立てた。
「この香り、気に入ってるんだ。」