第17章 一日だけ*赤司*
部屋から花火が見えるから、と一足早く征ちゃんのお家に戻った。
まだ花火までは少し時間がある。
「名前、久しぶりに将棋でもやらないか?」
「うん!私結構練習してきたよ?」
「僕が必ず勝つ。まぁ楽しませてくれ。」
征ちゃんの部屋は最低限の間接照明がつけられているだけ。
窓から月明かりが射し込んでいた。
パチン、パチンと駒を打つ音が響く。
征ちゃんは私の手に対して、あっという間に次の手を打ってくる。
全てを見透かすエンペラーアイの前には通用しないかもしれない。
だから、私は数手奇想天外なところに駒を打った。
正直自分でもこの数手がどう出てくるかわからない。
本人でも吉か凶かわからないのに、彼はどう運んでくるのか。
結局彼のスピードは変わらず、征ちゃんはあっさり私を下した。