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黒子のバスケ*Short Stories

第17章 一日だけ*赤司*


「やっぱり征ちゃんにはまだ敵わないかぁ…。征ちゃんはあっさり私の手を交わしちゃうもん。」

将棋もそうだし、恋愛だってそう。

付き合う前まで私のアプローチをさらりと交わしていた。

「いや。お前は強くなっている。あの予測不可能な配置は今後の展開が少し読みにくかった。…お前はそうやって、いつも…」

彼の言葉が終わる前に打ち上げ音が響き、空には色とりどりの花火が咲いていた。

「綺麗だね…。」

一日の終わりを告げる花火。

彼と一緒にいられるのはあと少し。

そう感じた瞬間、視界がぼやけ、一筋の涙が頬を伝っていた。

彼の指がその滴を拭う。

「征ちゃん…。また離れるの寂しいよ…。」

次にきっかけがあるとすれば、WCで彼が東京に戻ってくる時。

「今度は紅葉の時期に来るといい。…いや、きっかけなんかいらないな。お前が僕を必要とする時、僕がお前を必要とする時に会えばいい。」

そう言って彼は私を優しく抱きしめた。

残りわずかの二人の時間。

甘く痺れる秘密の時間。

彼との間に距離はもうない。

「…そういえば、征ちゃんさっき何て言おうとしたの?花火の音で聞こえなかったんだ。」

「ん?あぁ。君はいつも僕を翻弄する、と言ったんだ。名前への興味は尽きないよ。」



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