第16章 君の願い*赤司*
小太郎先輩と永吉先輩は競争しながら沖の方まで泳いでいく。
玲央先輩はビーチボートに乗って、のんびり漂っている。
「名前は沖の方まで行かないのか?」
私の腰の辺りまで水に浸かった辺りで、隣にいた赤司くんは私に尋ねた。
「…私あんまり泳ぐの得意じゃなくて。行ってみたいけど自信ないんだよね。」
そうか、と納得した様子を見せた彼が、私の前に移動した。
すると腕をとり、私を背負うような形になった。
「え!え!…赤司くん!?」
「僕に捕まっていれば未知の場所まで行けるだろう。」
私を背負った状態で、すいすいと沖の方へと進んでいく。
最初は腕を伸ばし、遠慮がちに彼の体から離れていたが、泳げない不安がどんどん二人の距離を近付けた。
気付けばぴたりとくっついていた。
あまり背は高くないけど、体つきはバスケをずっとしているだけあってしっかりしている。
冷たい海に入っているのに、体がとても熱い。
心臓の音聞こえてないかな。