第14章 Hot Spring*誠凛*
「コーヒー牛乳とフルーツ牛乳どっちがいいかと思ってな。考え込んでしまった。」
…。甘かった。そんな思惑通りの展開にはならないわ。
鉄平が覗き事件の弁明するのかな?とかなかったわ。
「私ならコーヒー牛乳かな。」
彼はそうか、とお金を入れてコーヒー牛乳のボタンを押した。
すると目の前に彼の大きな手に掴まれたコーヒー牛乳が現れた。
「くれるの?ありがと。」
冷たいコーヒー牛乳がひんやりと喉を潤し、ほどよい甘さが体に優しく染み渡る。
鉄平はというと、フルーツ牛乳をごくごくと勢いよく飲んでいる。
彼はのんびりしてるけど男の子だし、きっと可愛い女の子にも興味あるんだろうな。
二人分の飲み終ったパックを捨てると、正面の彼の右手がふわっと私の頭に乗った。
上から下へと、ゆっくりと優しく私の頭を撫でる。
「ずるいなぁ…。鉄平。」
私が鉄平に撫でられるの好きだって知っててやるんだから。
すると、空いた左腕が私の左肩に回り、ぐいっと彼の胸へと引き寄せられた。
「さっき、日向たちが女湯覗こうとしてたんだけどな。」
「うん。リコ先輩から聞いた。」
「俺は名前にこうして触ってる方がいい。」
ほんと、ずるいんだから。
さらりと彼の想いを伝えてくれた。
天然なんだか、策士なんだか。