第14章 Hot Spring*誠凛*
そろりと、1年部屋に足を踏み入れる。
ふすまを開けると、濡れたタオルで頭と目を覆う彼が布団に横になっていた。
彼の顔の横にポカリをとん、と置く。
「…火神くん、すいま…」
彼が言葉を言い切る前に、投げ出されていた手をきゅっと握る。
「名前…ですね。なんで君が…。」
「火神に会ってテツくんここにいるって聞いたの。…大丈夫?」
彼はタオルを避けて、私の方へ優しく視線を向けた。
「お風呂でのぼせてしまいました。もう大丈夫ですよ。」
「そっか…。安心した。」
思わず顔が緩んでしまう。
ふいに彼から腕が伸び、ぐいと抱き寄せられた。
自然と力が抜け、私も彼に寄り添うように横になった。
顔と顔の距離の近さに鼓動が早まる。
「お風呂上がりのいい香りがします。暖かくてとても抱き心地がいいです…。」
テツくんもだよ、と返すと彼は穏やかに微笑んだ。
「皆で温泉だったので、ちょっとはしゃいでしまいました。…今度は二人で温泉行きましょう。」
「えっ!え…うん。」
大人しそうに見える彼はたまに大胆になるみたい。
まぁいっか。
貴方の温もりが心地いいから。