第13章 KissHug*木吉*
屋上に上がると、夕方の空がとても美しく見えた。
秋風が心地よく爽やかな気持ちにさせてくれる。
椅子を見つけ並んで座り、また他愛もない話をして。
彼女のコロコロ変わる表情を見つめていた。
「ちょっと寒くなってきたね。戻ろっか。」
名前がすっと立ち上がって、杖を俺の方へ寄せた。
「…いらないよ。」
「え?」
すっと立ち上がり、小首を傾げる彼女を腕の中に包んだ。
いつもは上半身だけだった。
今日は全身で彼女を強く抱き締めた。
手から、腕から、脚から、胴体から。
体全体に彼女の温もりを感じる。
暖かくて優しくてじんわりと幸せな気持ちになる。
「鉄平…!足…治ったの?」
彼女は目を丸くして尋ねた。
「まだバスケは出来ないけどな。歩くくらいなら問題ない。」