第1章 01
試験管の中で怪しく光る、ショッキングピンク色の薬を、ハナはコーヒーの中に入れた。瞬間コーヒーからはキラキラとした金粉が舞い、黒色が赤色に変わる。それはだんだんと色を濃くし、また元の黒色へ戻った。相変わらず、彼女の作る薬は面白い。
「にしても珍しいな。お前が飲食物に薬混ぜるなんてよ」
「だって飲んでくれないんだもん。きっと警戒してるんだよ、マルコったら!」
膨れるハナに、苦笑いを返した。
そりゃあ、警戒もするだろう。この間なんてマルコが珍しーく半泣きで部屋に来たと思ったら、後ろからメス持ったハナが来るんだからよ。俺だってビビったわ。まぁ、こんなこと口が裂けても言えねぇけどな。
そうこうしている間に、食堂の扉が開いた。もちろん入って来たのは仕事終わりのマルコで、眠たげな表情をいつも以上に眠たげにしている。
「ハナ〜」
「はい、お疲れさん」
背後からギュッ、とハナを抱き締めるマルコ。なんだかんだあったが、この2人は結局のところお互いが大好きで仕方ないんだ。
ニヤニヤしながら、コーヒーを飲むマルコを見る。早く薬の結果が出ないだろうか、と思っているのは全員一緒で、マルコの隣にいるハナもエースも、頬の筋肉が完全に緩んでいた。