第3章 及川さんに誘われて……
「そうやって眉間に皺よせないで」
いきなり眉間を指でこすられた。
「可愛い顔が台無しだよ」
「メガネがないから……」
メガネがないと見えづらくて、すぐ眼を細めてしまう。
机の上のメガネに手を伸ばすと、
「ダメ。目が綺麗なんだから、今はメガネで隠さないで」
「別に、綺麗じゃないです」
「メガネ美人だけど、メガネ外すともっと可愛くてエロい目してるよね」
愛しそうに見つめてくれるのは、嬉しいけど……
「先輩はなんで付き合おうなんて言ったんですか?」
「え、なに急にその質問。何かのフラグ?」
「いえ、純粋に、どうしてかと思って……」
「そりゃ好きだからにきまってるでしょ」
「初めて会ったばかりだったのに?」
「ん……いいトコついてくるねぇ」
「真面目に」
「真面目に考えてるって」
「私のこと、何も知らないですよね……私も先輩のこと、噂しか知らなかったし」
「え、どんな噂?」
いろいろ。
「かっこよくて、校内人気投票1位で、勉強も運動もできて、優しくて……」
女の子には誰にも優しくて。
彼女が頻繁に変わる人……
「でもさ、」
先輩の長い脚が私の腰に絡みつく。
「好きだってことに、理由って必要?」
「……」
「俺は君が好きだよ。君は?」
そんな色っぽい流し目向けられたら……
「……好き、です…けど……」
「けど……なに?」
「いえ、好き、です」
「よかった」
よくないよ。
きゅっと胸が痛くなる。
『お前、この前別れたばっかじゃねえか』
はじめちゃんの怒声が頭の中でこだまする。
他の子にも優しい及川さんの姿に泣きたくなる。
ホントに及川さんは、私のこと好きなのか……
信じられない。