第15章 番外編2 我儘な彼氏
「げっ、岩ちゃん……」
簡易的な囲いの向こうで、はじめちゃんの怒鳴り声がした。
慌てて、出ていくと、はじめちゃんと花巻さんが待っている。
「ったくいつまで着替えにかかってんだ」
「あ、2人とも先に行っててくれてよかったのに~」
ヘラっと笑った及川さんに、はじめちゃんが胡乱な目を向ける。
「おい、おまえこんなところでヘンなことしてんじゃねぇだろうな、あ?」
「まさかっ」
ぶんぶん顔を振る及川さんの頭をバコンとはたいたはじめちゃんは、「ほら、行くぞ」と彼の腕を掴んで引っ張っていく。
「ち、ちょっと、岩ちゃん、どこ行くのさ!?」
「練習に決まってんだろうが」
「え、練習……って」
「ビーチバレー。そこにコートがあんだよ」
「げっ」
「げっ……じゃねぇよ。なんのために海来たんだッつうの」
「泳ぐためジャン」
「砂浜でバレーして鍛えるためだろうが」
ずるずると及川さんを引きずりながら、はじめちゃんがこっちを見た。
「おい、おまえは大丈夫か」
「うん。とりあえずこの辺にいるから」
「わかった。何かあったら金田一に言えよ」
「わかった」
背の高い3人は、いやでも目立つ。
女の子の集団が、及川さんを指さしているのが見えた。
きっと及川さん、普通に声とかかけられてしまうんだろう。
本人も自分のカッコよさを自覚してるし、それはかまわない。
でも……なんだろ、やっぱり面白くないかも……
ちょっと先の砂浜で、さっそくビーチバレーを始めようとしている姿を見るともなしに見る。
すぐにギャラリーが集まってくる。
……あ、やっぱり面白くない。
こんな風に思うの、初めてだ……