第15章 番外編2 我儘な彼氏
「これ着て」
「なんでですか?」
「日に焼けるから」
「日に焼けるために、海に来たんじゃ……」
「焼けるのもダメ」
「でも泳ぎたいし」
「泳がなくていいから」
「……海って、泳ぐためにあるんじゃ……」
「海は見るためにあるの!」
ほら、とまたTシャツを押し付けられる。
いい加減にしてほしい。
はぁっと小さくため息を吐くと、
「ちょっと、今溜息ついたよね!?」
すかさず指摘を受ける。
いつもバレー以外のことにはちゃらんぽらんなのに。
夏休みの海水浴場。
バレー部のらっきょ頭の1年生の子の親戚が海の家をやっているということで、バレー部のみんなで泳ぎにくることになったらしい。
『一緒に行くでしょ』
有無も言わさない口調で誘われた。
去年もおととしも海には来なかった。
だから、ちょっと楽しみだった。
なのに……
「はい、これ」
ダメ押しにまた言われて、しょうがなくうけとる。
海に着いて、水着に着替えて出てきたら、焦ったような及川さんにいきなりTシャツを渡された。
「そういうの、ほんとダメだから」
「そういうのって……?」
及川さんの視線が、身体に絡みつく。
「だから、そういうの!」
「……水着ですか?」
「ち、違う、……ビキニ!!!」
「え、なんで……」
「なんでって……、そんなの決まってるじゃん! ほかの奴が見るんだよ!?」
そりゃ、海だし、みんな水着だから、当然なんじゃ……
「そんなセクシーなの、着てくるなら言ってよ」
白い上下の普通のビキニだけど、何を見て及川さんがセクシーなんていうのかさっぱりわからない。
「と、とにかく、もう今日はこのTシャツ来て、じっとしてて」
じっとしてるって……
「でも、海入りたいし」
「だめ! 今日は金田一のとこにいて、あんまり肌見せないで」