第3章 及川さんに誘われて……
やっぱり今年も雨だった七夕の少し前、及川さんに付き合おうか、と言われた。
訊くんじゃなくて、誘うみたいに。
クラスメートに誘われて初めて見に行った試合。
興味がなくて本を読んでいたら、いきなりボールが頭に飛んできた。
わざと。
「なに観客向かって投げてんだ、クソ及川」
叫びながらボールを取りに来きたのは、3軒隣の幼馴染、はじめちゃんだった。
「お、お前が体育館にいるなんて珍しいな」
「うん。ちょっと誘われて……」
「だろうな。つまんなさそうだ」
「はじめちゃん、そういえばバレー部だったんだって、今思い出した」
「おめぇは昔っから本のことしか考えてねぇからな」
ははっと笑うはじめちゃんに向かって、背が高い1番のユニフォームを来た人が叫んだ。
「ちょっとぉ、こっちに投げてよ」
「てめえが来い、ボケッ。つか、人に向かってボール投げんな!」
「だってその子、俺に興味なさそうなんだもん」
「誰でもてめぇに興味あると思ったら大間違いだ、ボケ」
「ボケボケうるさいなぁ、岩ちゃん」
この人が「あの有名な」及川さん……
たしかにかっこいい。
「スマン、あのバカの言うことは気にするな。メガネ大丈夫だったか?」
「………あ、うん」
額に軽くあたっただけで、メガネにはあたってない。
「ねえねえ、そこのメガネちゃん、きみ何年生?」
「2年です」
「ふーん」
「おい、行くぞ」
「あの……」
目の前でじろじろ見られても、困る……
「ねえ、俺とつきあわない、メガネちゃん?」
「……」
え?
なんか、今、すごいことを言われたような……