第11章 及川さんに愛されて……
くしゅん。
無意識にくしゃみが出て、ちょっと寒さを感じる。
「もしかして、風邪引いた?」
おでこに大きな手が触れる。
「大丈夫です、ただのくしゃみだから」
「ホントに? でもなんか熱くない?」
「たぶんちょっと雨で冷えただけだから」
「夏の雨は油断しないほうがいい」
及川さんは私をリビングのソファに座らせる。
「それ、冷めてるから新しいの作ってあげるよ」
さっきのマグカップを手にキッチンへ向かう背中にとっさに手を伸ばす。
「……どうした?」
「あ……あ、の……」
「ちょっとそこで横になってなよ」
さっきまでキスしてたのに。
それ以上はナシというような顔してる。
普段は強引なのに。
でも、こういう時は、ちゃんと私のこと考えてくれる。
やっぱり及川さんは優しい。
でも、そんな態度をふと寂しく思ってしまう私って……
……さっき、たくさんキスされたから?
こんなこと考えてる私って、ヘン?
自分でもわかってる。
寒いから、余計に及川さんの肌が恋しい?
……違う。
寒い以上に、私、火照ってる気がする……
「おいか……徹、あの、私……」
私、何言おうとしてるんだろう。
「……」
なにかを察した及川さんが、私の横に座る。
「……もしかして、欲しくなっちゃった?」
「だって……会いたかったから……」
「そんな可愛い顔で誘わないでくれる……?」
私の気持ちをくみ取ったように、及川さんの唇が私の唇に触れる。
「んっ……」
さっきまでのキスとは違う。
くちゅっ、くちゅっ。
絡んだ舌を吸われる。
身体中の力が抜けていくような、濃厚なキス……
強く抱きしめられながらの激しいキスに、息があがる。
「徹……」
肩に手を伸ばそうとすると、手首を掴まれた。
背中をもう一方の手で囲まれる。
そのまま身体をベッドに倒されたと思ったら、唇を優しく噛まれた。