第11章 及川さんに愛されて……
びくっとして見上げると、及川さんがじっと私を見つめてた。
「な、何もなかっ……」
「何もないのに書いてくる岩ちゃんじゃないし。何されたの?」
「……ちょっとだけ、触られた、だけ……本当に。私、いやって顔叩いちゃったし……」
「ホント、ごめん……」
「本当に、心配するようなことはなかったから……」
「あ~、岩ちゃんのことぶん殴りたい……」
「だめ、です……」
「わかってる……」
及川さんは、わかってる。
自分の態度がはじめちゃんを誘発したってこと。
及川さんは、絶対はじめちゃんのこと悪くいわない。
こういうことがあっても。
やっぱり、はじめちゃんが親友だから。
「キスも、……された?」
即座に首を振る。
「よかった……いや、よくないけど……、嫌な想いさせて、本当にごめん」
「もういいですから」
なにをどうされたのか。自分が何に感じてしまったのか。
私の記憶にはある。覚えてる。
でも、絶対に言わない。死ぬまで、言わない。
「ごめん」
おでこにゆっくりとキスされる。
「ごめん」
「大丈夫だか、ら……」
ちゅっ。今度は頬に。
「ごめん」
ちゅっ。鼻の頭に。
「こんなに泣かせて、ごめん……」
唇に小さなキス。
「ねえ、岩ちゃんに触られたの、どこ……?」
「……胸、だけ」
「本当に?」
小鳥がついばむように、何度も小さくキスされる。
「………本当」
じんわりと、心も体も温かくなってくる。
「君は、ウソがヘタだよね……でも、俺はそんな君が好きだよ」