第11章 及川さんに愛されて……
「……」
カウンターアタックのように大きな声が被さってくる。
「君って、いっつもそうだよね。俺の言うことなら聞いてくれるって、本当に俺のことっ、」
「好きですっ!」
「………っ!」
「好きだから、言うこと聞いてあげたいって思うんじゃないんですかっ!?私、及川さんのこと好きだから、いつも会えるの楽しみにしてたし、及川さんだからすごく恥ずかしいことされても、我慢できたし気持ちよかった……」
頬が濡れてる……
絶対眼の前では泣かないって決めてたのに……
バスローブをぎゅっと手で掴むと、ポケットに入れた下着の感触があった。
「これだって……」
黒いレースの上下を取りだす。
「これだって、今日会えるからって思ってつけたのに……け、結局はじめちゃんが……」
ダメだ、涙が止まらない……
俯いて、顔を隠そうとすると、落ちかけた顎に及川さんの手が触れた。
「ごめん」
掠めるような、柔らかい唇の感触。
「ごめん」
ぎゅっと抱きしめられた。
「及川、さん……」
「ほんと、ごめん」
冷え切った心と肌に、及川さんの体温がドクドクと流れ込んでくる。
「俺、すげぇ嫉妬した、今日君が他の男と喋ってるの見たとき」
「だ、からそれは……」
「君のこと好きすぎて、信じられなくて、いつも君のこと試してみたくて、すげぇイジワルした」
やっぱり試してたんだ……
「今日見た奴も、君があいつのこといいなんて言い出す前に、こっちから先にって思って、むしゃくしゃしてる時についマッキーに別れたとか言ったら、すぐそれが広まって……ヤバいって思ったときは、もうなんか岩ちゃん超怒ってて」
「私のこと、もっと信じて下さい」
「信じてる……でも好きすぎて、信じられない」
「なんですか、それ……」
「だって、岩ちゃんと何かあったんだよね……?」