第9章 幼なじみに惑わされて‥‥‥
クラス委員の彼は、クラスでもいつも輪の中にいる。
そして割と輪の外にいる私にも、よく声をかけてくれる。
同じクラスで、数少ない親しいと言える友達。
同じく地下街に行く彼と暫く一緒に歩いて、ついでにお菓子のアドバイスを受ける。
女と男は好むスイーツが違う。
そんな講義?を長々と受けて、これぞという一品を選ぶ。
御礼に近くのカフェに誘った。
お言葉に甘えて……と丁寧な物言いの彼は、でも座ると、突然及川さんの話を向けてきた。
「そういえば、今、3年のバレー部の先輩と付き合ってるんだよね……?」
「あ、うん……知ってるんだ」
自分から公言したことはない。
「有名だよ。ほらあの先輩人気あるみたいだし、文化祭とかでも人気投票で一位だよね」
「だね」
「向こうから告白してきたの?」
「……どうして?」
「あんなに人気でいつも女の子が追いかけてる先輩に告白されるって、すごいなと思って」
「別にすごくないよ、きっと」
今ならわかる。
なんとなく、私に声かけた。
たぶん、地味で珍しかったから。
前の彼女と別れて寂しかったから。
バレーに興味なさそうな態度が気に障ったから。
そんな「好き」以外の理由を考えれば、沢山思いつく。
そして、拒否されることが怖い及川さんは……
私を試してる。
「でも、あの先輩のこと、好きなんだよね?」
「うん」
「付き合ってって言われてから好きになったの?」
頷く。
「それって、本当に好きなの?」
「好きだよ」
「なんでわかるの? 期末テストの頃ってまだ付き合ってなかったよね?」
たしかにまだ付き合って2か月弱。
「わかるよ、自分のことだもん」
「でも好きになるって、時間がかからない?」
「時間は関係ないと思う。ストンって落ちるだけだから」
及川さんは、ほんと優しい。
デフォルトで優しい。
その反面、私を試すようなことばっかする。
どちらも及川さんの顔。
そのどっちも好き。
彼は理解できなさそうな顔をしてたけど、ほっておいた。
及川さんのことを人気のあるかっこいい先輩。
表面だけみてそう思ってる人は、そう思えばいい。
及川さんは、違う。
及川さんは、ヘラヘラしてるけど……繊細な人。