第9章 幼なじみに惑わされて‥‥‥
3泊4日の合宿が終わった次の日、及川さんから電話があった。
『俺、君のことぜんぜん信用してないから』
最後の電話であんな意味深な、ちょっと傷つくようなこと言ったのに、
『明日、泊まりにおいでよ』
そんなこと忘れたように、甘く私を誘った。
「ご家族、帰ってこられたんじゃ……」
『今度はお盆で母親の実家にみんなで行ってる。だからまた俺一人だから』
うちも相変わらずお母さんは夜勤続き。
お父さんもお盆休みぐらいと思うが、仕事で帰ってこないらしい。
毎年のことだけど。
しかも合宿の後、お盆の関係でバレー部は3日続けて部活はお休みらしい。
『俺が夕飯作ってあげるよ』
どことなくウキウキした声。
『信用してない』の言葉は冗談だった?
夜直接及川さん家に行くことを約束して電話を切ったけど、なんか気持ちが落ち着かない。
久々に会えるから?
信用してないなんて言われたから?
それとも……あんな電話でのエッチをしたから……?
なんか、会うのが恥ずかしい。
でも、しばらくぶりに会うから……
ふと思い出して、クローゼットの下着の入った引き出しから、白い布袋を取り出す。
従姉に前にもらった黒いレースの下着。
上下お揃いで、すごく色っぽい大人の下着。
もらったときは、こんなのつける機会ないって思ってたけど……
これ、つけていこう。
それに、家に行くなら、何か持っていった方がいい。
前回は母親が非番の日に作ったクッキーを大量に持って行った。
甘いものも好きな及川さんは、喜んでパクパク食べてくれた。
自分でお菓子作って持ってったらいいんだろうけど、私には女の子っぽい才能がない。
今回は、何か買って行こう。
次の日、市立図書館に本を返却に行くついでに、デパ地下に寄ることにした。
8月のお盆付近は、東北でも暑い。
連日猛暑が続いている。
図書館を出て、地下街に行こうとしたら、
「あれ、こんなところで何してんの」
交差点で同じクラスの男子に会った。