第6章 嫉妬に愛撫されて……
「ちょっと岩ちゃんに対して無防備すぎじゃない?」
「無防備って……はじめちゃんはただの幼馴染だし」
「向こうはそう思ってないみたいだったけど」
「誤解です、そんなの」
「てか、暗に好きって言われたようなもんだよね、あれ」
「違います」
「さあね、どうだか……」
及川さん、不機嫌そう。
珍しい。
「岩ちゃんみたいな真面目なタイプって、結構面倒くさいと思うけど……」
「どういう意味ですか、それ」
「いつまでも、君と俺の間に入ってこようとするってこと」
それって、つまり……
思わず笑ってしまう。
「それはないですよ、絶対。はじめちゃんにとって私、妹みたいなもんだから、いろいろうるさく言いたくなるんだと思います」
小さい頃から知ってる間柄では、恋愛感情なんて生まれてこない……と思うけど……。
「妹、ねぇ……そういうのが一番面倒くさいんだよね……ま、俺は別にどっちでもいいけど」
そっけない態度。
どうでもいいような。
「どっちでもいいって、それって……」
「別に君が岩ちゃんを選ぶなら、それでもいいってこと」
突き放したような言い方に、ちょっとカチンときた。
「……先輩がいるのに、はじめちゃんを選ぶなんてあるわけないじゃないですか」
大体、私、はじめちゃんのことそういう意味で意識したことないし。
ホント、幼馴染なだけだし。
眉間に皺がよった自分の顔。
きっとブサイクに映ってる。
でも変に勘ぐる及川さんへのイラつきを抑えることができない。
「先輩と、はじめちゃん……君ってホント、俺のこと名前で呼んでくれないよね」
でも、及川先輩もそれは同じみたいだった。
口をとがらせて、同じように眉間に皺を寄せてる。
「本当は、岩ちゃんにもこんなふうに抱かれたいなんて思ってるとか……?」
いきなり腕を引っ張られる。
「……っ!」
背後から胸に抱き寄せられる。
「…ちょっ……先輩……?」
ずるずると、羽交い絞めにされたまま、後ろ向きに引きずられる。
カチン。
鍵が閉まる音。
図書室のドアの鍵だ。
「先輩?」
シンとした図書室。
「及川さん? 何で鍵なんて……」
シュルっと布が擦れる音がした。
ぱっと眼の前が白くなり、そして暗くなる。
「……っ! 先輩、なに?」