第6章 嫉妬に愛撫されて……
突然参入してきた声。
「及川さん……」
いつから……?
ドアに寄りかかり、腕を組んでこっちを眺めている。
ちょっと面白そうに。
でも、ちょっと不機嫌そうに。
「ごめん、もしかして邪魔しちゃった?」
「ち、違いますッ、はじめちゃんは……」
「君のことが好き、なんだよね?」
「ばっか違ぇよ!」
「隠さなくていいよ~、ずっと聞いてたし」
「盗み聴きかよ、てめぇ」
「別に聞きたかったわけじゃないし。俺がいるの気づかないで喋ってたの岩ちゃんじゃん」
「いるなら声かけろよ。じゃなきゃ盗み聴きだろうが!」
「はじめちゃん、もういいから」
2人の会話がなんとなく熱くなってきてる気がして、怖い。
こういう話、してほしくない。
「はじめちゃんは、私の事気にしてくれただけで……」
「てめぇがこいつに本気かどうか怪しいから気になってたんだよっ」
「何それ、なんか岩ちゃん彼女のお兄ちゃんみたい」
及川先輩は、うざったそうに肩を竦めた。
「本気、本気。俺はいつだって本気だよ」
「その言い方が嘘くせぇんだよっ」
はじめちゃんが真剣に怒ってる。
「はじめちゃん、ほんと、もういいってば」
「よくねぇよっ!!」
はじめちゃんが私の肩をきつく抱き寄せた。
「こいつは、てめぇが遊んでいいような女じぇねぇんだよっ」
「なにその言い方、岩ちゃんこの子の何? 親?」
「うるせえっ」
「あ、やっぱり……」
何かに気がついたように、及川さんが面白そうに眼を瞠る。
「うるせえって言ってんだろ、クソ及川っ」
「ホント岩ちゃん、悪口ワンパターンだよね」
ハハハと、軽快に笑いながらも、及川さんの顔が鋭くなる。
なんか、怖い……。
「てか、あげないけどね。彼女は、俺のだから」
及川さんがずいっと間に入ってくる。
試合の時見せるような真剣な横顔。
はじめちゃんも及川さんがふざけてないことが分かったのだろう。
「別に「くれ」なんて言ってねぇだろうが」
すんなり私から離れてくれた。
「欲しそうにしてたくせに」
「てめぇが本気なら、別に俺はどうでもいい」
じゃぁな、と借りた本を持って出ていく。
後姿をぼっと見てると、ぐいっと手で顎を取られた。
端正な顔が目の前にある。
メガネの奥で眼を瞬かせると、すっとメガネを外された。