第2章 マネージャー?
当然私にこんな美人な知り合いはいない。
カラスみたいに真っ黒な髪に口元のほくろがセクシーな・・・クールビューティーという言葉がこれほど似合う人間を、私は未だに見たことがない。
驚いてすっかり硬直してしまった私に、美人な先輩は慌てて自己紹介をした。
「突然ごめんね。私、3年2組の清水潔子です」
「あ、えっと!1年4組の苗字名前と申します」
「ありがとう。そんなに堅くならなくていいからね」
軽く微笑まれて、思わず息を飲んだ。
この人はかなりレベルの高い美人だ。
レベルの高い美人って何だろう。とにかくすごく美人だ。美女だ。
女の私が頬を赤らめてしまうほどには。
「あのね、実はお願いがあって。苗字さん、部活には何も入ってないんだよね?」
「あ、はい。特には」
清水先輩の言葉によって我に帰った私は、入学当時バレー部に入ろうか悩んでいたことを思い出していた。
当然入るのは菅原先輩目的なんだけど、烏野は今全国を目指して活動しているとのことだ。
本気でやっている人たちの中に、そんな不純な動機で入ることはあまりに失礼なので、結局入部は断念したのだった。
「よかったら、男子バレー部のマネージャーをしてみる気はない?」
「・・・エッ!?」
重ねられた問いかけに、思わず素っ頓狂な声が出る。
え、今、バレー部って言った・・・?
清水先輩が手にしている勧誘チラシには、確かに大きく「男子バレー部 部員&マネージャー募集中」と書かれている。
このタイミングでまさかのお誘いだ。
「今烏野は全国を目指して毎日練習してるんだけど、マネージャーが私1人しかいないの。私は今年で引退しちゃうから、来年みんなを支えてくれるマネージャーが入部してくれたら心強いんだけど・・・どうかな?」
「あ、えっと・・・」
「ごめんなさい、こんなこと突然言われても困りますよね・・・でも、よかったら考えておいてください」
清水先輩は私にチラシを手渡して、ペコリと会釈してから隣の5組へと向かっていった。
戸惑いと困惑を隠せない私を残して。