• テキストサイズ

【R18】月島蛍は何色の夢をみるか?

第2章 雨とネコとキミ


途中で子猫用の餌を買った彼女は、月島の家までついてきた。

たしかに子猫だけ押し付けられても困ったが、家に来るというのも、それはそれで面倒だと思った。

「私のせいで急にお願いすることになったから、ちゃんとご家族に謝りたいの」

猫を見つけてどうしたらよいかわからなくて、おろおろしてたのに……

どっか頑固そうなとこもあるっぽい。

けっこう面倒くさい人かも。

地下鉄の中で、ちらりと隣に座った彼女を見やると、ちょうど自分を見上げていた彼女と目があった。

「……なに?」

「あの、お名前訊いてなかったと思って……」

そういえば、お互い名乗りもしなかった。

「ツキシマです」

「ツキシマさん……高校生ですか?」

「制服みればわかるデショ……」

「で、ですよね……」

あんまり興味ないけど、こっちも訊くべきらしい。

「じゃあ君は……」

「あ、私、田中です。田中つばなです」

げ、あのうるさい先輩と同じ名前だ、と思ったが、それより名前にひっかかった。

「つばなって、あの草花のつばな? 茅に花って書く……」

またぱあっと彼女……、いや田中つばなの顔が笑んだ。

「よくご存じですね!」

「まあ」

母親が庭で草花を育てるのが好きで、小さい頃に教わったのを覚えていただけだ。

「で、田中さんは、もしかして……大学生?」

さっきゼミと言っていたから、もしやと思っていた。

余りに童顔で小さいから、同級かヘタすると中学生かと思っていた。

「はい、大学3年です」

「もしかして、じゃあそれって制服じゃなくて、就活用とか」

「あ、はい……ホントは今日面接だったんですけど」

バカだ、この人。

言われなくても想像がつく。

猫を見つけてほっておけなくて、面接に遅れた、みたいな。

「結構第一本命みたいな、就職したいとこだったから、残念です。

うなだれながらも、膝の上に乗せた箱の中を覗き込む顔が笑んでいる。

妙にまつ毛長い。

どうでもいいことに気が付いた。



/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp