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【R18】月島蛍は何色の夢をみるか?

第2章 雨とネコとキミ


「あらあら、まあまあ」

月島家に着くと、母親がすでにいろいろ準備をして待ち構えていた。

わざわざ「田中つばな」という人を紹介しなくても、母親は勝手にあれこれ訊いて、子猫を世話しながら女2人で盛り上がっている。

なんだかな……と疲労感を覚えていると、

「よお、蛍」

「……なんで、いるの?」

兄さんがいきなり、いた。

「なんでって、今週末は同窓会があるから帰ってくるっていっただろ」

「知らないし」

「あら、蛍、母さん言ったわよ」

疲労感がよけい増す。

「あれ、やっぱりはなじゃん」

兄さんの声に、田中つばなが「あっ」と飛び上がった。

「月島先輩! え、ここ、月島先輩のお宅ですか!?」

「そうそう、なんだ、はなだったのか」

おおらかに笑う兄さんの声がいつもより優しくて、びっくりする。

「なんだ2人、知り合いナンダ……」

おせっかいなところがそっくりだ。

「こいつ、大学の時の後輩なんだよ」

「お久しぶりです、先輩」

なんだかんだと、母親を交えて近況報告とかを始めたのをよそに、2階の自室へ入る。

ジーンズとシャツに着替えて、買った本をバッグから出したついでにちらっと読んでいたら、コンコンとドアが叩かれた。

「おい蛍、母さんがお茶どうだって。ケーキもあるってよ」

ドアが開く。

「ちょっと勝手にあけないでよ」

「なに、ヤラシイことでもしてた?」

「バカじゃないの……」

兄さんがニヤニヤしてる。

気持ちワル……

「って、なに?」

「はなのこと助けるなんて、蛍も優しいと思ってさ」

「そんなんじゃないし。成り行きだから」

「なに照れてんだよ」

「照れてないし」

「はな、可愛いだろ」

「別にどうでもいいし……てか、はなってなに、その呼び方」

「ああ、ゼミの時、田中ってのが2人いてさ。つばなって言いにくいだろ。だから略称がはなになった」

たしかに「つばな」は言いにくい。

「田中」もヘンな坊主頭を思い出してしまう。

「まあ、なんかヘンな人だよね」

「基本、いろいろ不器用なヤツだからさ」

「そういう人、ほんとムリ」

不器用な人間を見てると、冷める。

あの彼女も、見てるとなんだか、イラッとする。

けど……

どっか、ほっとけなかった。


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