第2章 雨とネコとキミ
「なんで僕が」
「だって拾ったんだし」
「だから僕じが拾ったわけじゃない」
「でも居合わせたんだろ」
「偶然だし」
「俺から姉さんに電話しとくわ」
「ちょっと!」
こっちの話を聞かずに、おじさんはすぐに電話をかけた。
うちに、だ。
会話から、母親と話しているのがわかる。
「……じゃあ姉さん、よろしく」
話はすんなり決まったようで、おじさんはニヤっと笑った。
「姉さん、待ってるってさ」
「ちょっと、勝手なことしないでよ」
「いいだろ、姉さんも昼間一緒に過ごす人ができて嬉しいってよ」
嘘じゃないだろう、それは。
母親は動物が大好きだ。
最後に飼ってた猫が死んだのが、月島が小学校6年の時だ。
あれから母親は、たまに死んだ猫のことを口にする。
「なんだかいろいろ最悪なんだケド」
ぶすっとしてると、ずっと行く末を見守っていた彼女が、がばっと頭を下げた。
「あ、ありがとうございます……本当に」
「ホント、迷惑なんだけど」
「バカ蛍、そんなこと言うな。動物を助けるものは、動物に救われる、だぞ」
「なにそれ」
「俺の言葉だ」
「信頼性ゼロじゃん」
借りたバスタオルで頭を吹き終わった彼女が、お財布を出す。
「あの、おいくらですか」
「いいって、いらないから」
「でも……」
「身内の事には金取らないから、俺」
「だから僕のネコじゃないんですけど……」
「でもそれじゃ……」
「じゃあ、この猫のために餌飼って蛍に渡してやって」
「ありがとうございます」
小さい彼女が、また大きなお辞儀をする。
余計に、背が小さく見えた。
某映画のホビットみたいだと思った。