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【R18】月島蛍は何色の夢をみるか?

第2章 雨とネコとキミ


いろいろ眺めて選んでから本屋を出ると、外はまだ大雨のままだった。

考えていたより多くの本を買ってしまい、バッグが重い。

スマホで時間を確認すると1時間以上本屋にいたらしい。

傘を広げて、地下鉄駅まで歩き始める。

さっきの猫のところを通ると、まだ女が箱の前にうずくまっていた。

黙って箱の中を見ている。

ヘンな人。

通り過ぎようとした時、突然箱の中から子猫が飛び出してきた。

「あっ……だめだよっ」

小さい声がした。

子猫は月島の足元までトタトタ歩いてくると、制服のズボンに手をひっかけて、ニィと鳴く。

「だめだよ、ぬれちゃうよ」

女が駆け寄ってきても、子猫は月島を見上げたままだ。

「……ちょっと、爪立てないでほしいんだけど……」

仕方なく子猫をすくいあげると、指を舐めてくる。

「気に入られちゃいましたね」

女の笑んだ唇から白い息が漏れた。

9月に入ったばかりなのに、東北の雨の日はもう寒い。

「そんなに濡れてなにやってるんですか……」

「この子が捨てられてて」

「……」

「でも私はアパートだから飼えないし」

「じゃあそのままにしてくしかないですね」

「でもこんな寒いのに可哀想だから」

「でも飼えないんですよね?」

「……」

「じゃあ置いてくしかないデショ」

手の中の猫は、飽きずに月島の指を舐めたり甘噛みしたりしている。

「でも……」

「自分で責任取れないなら、優しくしちゃだめデショ」

ため口で言い放つ。

事実だ。

飼えないなら、情けをかけない。

情けをかけるなら、最後まで責任を持つ。

父親がよく兄さんに言っていた言葉だ。

兄さんは子供の頃、優しい性格だからか、よく犬や猫を拾ってきた。

毎回父親にたしなめられた。

結局拾った半数は月島家の家族となり、半数は別の家にもらわれていった。

「でも濡れてたし……」

「自分の方がよっぽど濡れてない?」

「……だね」

プールに洋服のまま飛び込んだ姿だ。

制服らしきブレザーとスカートがしっとり体に張り付いている。

こんな制服の高校、あったっけ……。

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