第2章 雨とネコとキミ
地下鉄の駅を出ると、すごい雨だった。
学校を出た時は降るかも程度の空だったのが、いきなりこれだ。
持ってきていた傘をさすと、月島蛍は歩き出した。
ヘッドホンを付けているからわからないが、なければ「ザーッ」という音だろう、きっと。
金曜日の夕方、部活が休みになった。
珍しいが、普段使っている体育館の補修工事があるからしょうがない。
日向や影山などはいつもの如く自主練をするようでお誘いを受けたが、丁重にお断りして仙台駅前の大型本屋に行くことにした。
前から気になっていた物理の参考書も欲しかったし、気になっていたプログラミングの本も買いたかった。
ネットで注文することも多いが、中を見て判断したいものはやはり本屋に来るしかない。
にぃ、にぃ、にぃ。
丁度ヘッドホンからの音楽が途切れた時だ。
にい、にぃ……
ネコか?
ふと横路地に視線をやると、小さな箱が道においてあった。
すぐに捨て猫だとわかった。
箱の上にはピンクの傘がある。
誰かがせめてもと傘をかぶせていったらしい。
ちらっと上から見ると、白い子猫が一匹、声を張り上げて鳴いている。
「まぁ、頑張って」
何も見なかったように、歩き出そうとしたとき、誰かが横を通った。
「ごめんね、お待たせ」
ずぶ濡れの女が、箱の前にかがみ込む。
どうやら近くのコンビニかどこかで餌を買ってきたらしい。
ビニール袋から猫缶を取り出している。
傘は猫に譲って、自分はずぶ濡れって……
いろいろ不器用そうなタイプだ。
ちらりと思って、本屋へ向かった。