第5章 初めてのデート
最終的に水族館を出た時には夜9時を回っていた。
水族館に隣接した小ぶりのテーマパークで遊んで、夕飯を食べて、花火の饗宴を眺めたら気が付いたらこんな時間になっていた。
名残惜しそうに帰宅の途につく家族連れでまだ周囲は人でにぎわっている。
ゲートを出た広場は、ちょうど海に面していて、遊歩道のガス灯がロマンチックな雰囲気を醸し出している。
駅はこの遊歩道を歩いていった先にある。
「今日は、ホント一緒にきてくれてありがとう」
「それ、もう言ったデショ」
「そうだけど、忘れなかったからもう一回」
「……どういたしまして」
「蛍くんは彼女なんかとこういうところ来ないの?」
「僕、彼女いるなんて言った?」
「あ……言ってないけど、いるかなと思って……蛍くんカッコいいし」
ねぇ一人ごちたような無邪気ぽい言い方にカチンときた。
「なにそれ、僕が彼女でもないのにセックスするっていいたいワケ?」
「別に、そういう意味じゃないよ」
「そういう意味デショ。僕には彼女がいるけど、はなさんともセックスして、誘われてせっかくのお休みにこんなとこまで来た、大学の先輩の弟の高校生……」
「……」
「都合悪くなると黙るの、やめてもらえる?」
ずいっと数歩前に出ると、彼女の前に向き合って立つ。
彼女の足も止まる。
「他に言うことあるんじゃないの?」
「……他って……今日は、付き合ってくれてありがとう……?」
「違うデショ……ホント、天然」
「じゃあ……なに?」
「それ、僕に訊くの?」
空気読まないところにやっぱりちょっとイラっとするけど……
ここは、言わせたい。
聞いておきたい。
「今日、なんで僕を誘ったの?」