第5章 初めてのデート
「………」
「今日久しぶりに部活ないフリーな日だったんだけど」
「……ごめん」
「謝ってほしいんじゃないし。理由が知りたいだけ」
「別に理由なんて……」
「彼女がいるかもしれない先輩の弟をわざわざ誘った理由、ナイなんてことないデショ」
「……蛍くんと来たかったから」
「だからなんで?」
ほら、またためらう。
一つ訊けば、一つ答える。
でもその先にはまだ何かある。
どうしてためらうのか、理由がわからない。
「僕が高校生だから言いづらい?」
「……」
「僕が年下だから気になる?」
「そんな年下とか思ったこともないよ……蛍くん、態度デカいし」
「じゃあ何が気になるワケ?」
「……別に、何も」
「じゃあ言って。僕に対する礼儀じゃない、そういうの?」
じゃあ自分はどうなんだ。
心の中でセルフつっこみする。
たしかに、自分もはっきり「好き」とは言ってない。
「付き合おう」とも言ってない。
たしかに自分は恋愛に前向きじゃない。
高校生だから普通にそういう気持ちはある。
性欲だってある。
でも、やっぱり田中や西谷のようなのは理解できない。
後さき考えずに、気持ちに素直なタイプ。
気持ちと行動が直結しているタイプ。
どうしても自分は結果が保証されていないと動けない。
だから、彼女の気持ちを100%確かめた後でないと、言えない。
「付き合おうか」って……