第1章 キミを探して……
「次は~、八景島~、八景島~」
ヘッドホン越しに聞こえてきた目的地の名前に、珍しく自分が緊張していると感じる。
あれから、6年。
「……なに、必死になってんだか……」
冷めた声で、自分に言う。
自分が冷めた人間だって自覚はある。
そしてそんな自分が別に嫌いじゃない。
がむしゃらになる人間は、好きじゃない。
なんでそんなに必死になれるのか、理解できない。
昔高校時代にバレー部で一緒だった日向とか、どう逆立ちしても性格が合わなかった。
なのに……
「ホント、なに必死になってんだか……」
もう一度声に出して呟いたとき、電車が止まって、目の前のドアが開いた。
月島蛍は、迷うことなく長い脚で踏み出した。