第4章 どうしてか、愛しすぎて……
「ご、ごめんなさい、も、もう帰るね」
慌てて立ち上がる彼女の前に立ちはだかる。
「蛍、くん……」
「なんで今、指舐めたの?」
「……」
「たまにはちゃんと答えてくれてもいいんじゃない?」
「……」
「それとも年下の高校生で遊ぶのが趣味?」
「ち、違うっ……」
「じゃあ、なんで?」
「私、……私、あの……」
両腕を壁について、彼女を間に挟み込む。
「なに? ちゃんと言って」
「私、蛍くんのこと……」
あとは気がついて。
そう訴えるような潤んだ大きな瞳を向けられたら、普通の男なら誤解する。
「そういう顔すると、つけこむよ」
ワザと耳元で囁く。
何かを我慢するみたいにきゅっと下唇を噛んで……彼女は迷ってる。
ほら、やっぱり……
イヤなんデショ……
僕じゃ、イヤなんだ。
「ウソです。別に僕、そんな不自由してないから」
強がりじゃない。
背が高いからか、冷めてるからか、メガネかけてるからか。
小さい頃から、女の子にはモテた。
兄さんよりも、はるかに。
「僕、別にモテないわけじゃないんで」
べつに、どうでもいいし……
そんな顔で踵を返すと、シャツを掴まれる。
ギュッ
小さい手が、自分を引き留める。
壁に背をつけて怯えたように直立する彼女。
その前にひざまずく。
正面にきた自分の顔を避けるように背伸びしかけた彼女の唇を、下から掬うように塞いだ。
「んっ……ァ……」
チュク、チュク
むさぼるように舌を絡み合わせる。
一生懸命自分を受け入れようとする彼女をもっと貪りたくて、頭を引き寄せると、抱き込みながら深く舌をさし入れた。
「っ、んんっ……ぁ……」
苦しそうに腕を叩かれる。
最後にもう一度チュッと吸ってから離すと、肩で息する彼女に睨まれた。
「なんで……?」
「なんでってなに?」
「蛍くん、なんで、キスするの……」
「さあ……はなさんが気になるから」
「どうして」
「こういうことに理由って必要?」
必要だ、と頭の中の理性は言う。
でも、身体は全く別の熱いカタマリをぐわりと押し上げる。
火山のマグマみたいに。
ゆっくりと、押しあがり、そして……
一気に噴火する。
この気持ちみたいに……