第3章 初めてのキス
その後、田中つばなは2週間おきぐらいに、月島家にやってくるようになった。
主にはホタルの餌を届けにくるためだ。
結局あの子猫の名前は「ホタル」になった。
「ノラでいいじゃん」
と言ったが、母親も彼女も真っ向から反対した。
「ホタルでどうでしょう?」
そう提案したのは彼女だ。
どうやら、全身真っ白なのに、しっぽの先だけが黄色いから、らしい。
「蛍が拾ってきたんだし、ぴったりね」
母親は諸手を挙げて(?)賛成した。
「人の名前勝手に使うのやめてくれる? ってか僕が拾ってきたわけじゃないし」
ぶつぶつ言ったが無駄だった。
母親は彼女をいたく気にいったようで、来た日は夕飯に誘う。
そして夜、毎回最寄駅まで送っていくは月島だった。
この夜も、最寄駅まで一緒に並んで歩いた。
11月も半ばを過ぎ、今年はもうコートとマフラーが必要なほど寒い。
「てか、こんなとこ来てて大丈夫なの?」
「どういう意味?」
「就職、まだ決まってないんデショ?」
「あ、うん……」
性格が不器用だからか、運が悪いのか。
あれからも就職が内定したという話は聞かない。
「まあぼちぼち頑張る」
「そんな態度だからダメなんじゃないの?」
「……かな」
悪い人じゃない。
それは月島家に来だして、すぐにわかった。
母親も性格がいいと絶賛している。
でも、いろいろ不器用だ。
そそっかしい。
損するタイプ。
一番、性格が合わないタイプ……。