第3章 初めてのキス
兄さんに遅れて1階へ降りた。
手を洗い忘おうとバスルーム横の洗面所を使おうと引き戸を開けた。
「きゃっ……」
「……っ!」
白いシャツを着た彼女がいた。
月島のシャツだ。
シャツの裾が太腿まで隠しているけど、下は何も履いていない。
彼女の両手が慌てたように太腿あたりのシャツの端を引っ張っている。
「あ、あの、す、すみません! 服が濡れてるって、お母さんが服をか、かしてくれて……そ、それで……」
「あ、すいません」
素直にここは謝って、くるりと背を向けて出る。
「あっ……っ」
「え……」
オロオロしながら、脱衣所の籠に入っているパンツを取ろうとした彼女がバスマットに足を引っかけ、こちらに倒れ込んでくる。
「っ……」
咄嗟に抱きとめる。
「ひゃっ……」
「ちょっと、危ないから」
細い。
抱きとめた腰が細い。
そして腕に触れた胸のふくらみが、妙に大きいことに、腕の肌がなぜかぞわりとする。
胸元にある彼女の頭。
まだしっとり濡れた髪。
その先に、シャツの合わせ目から、白い素肌が見えた。
ブラジャーをつけてない、ミルク色の胸元。
素肌の、2つのふくらみの間にできた谷間。
「ご、ごめん……なさい」
消え入るような声。
天然パーマのようなウェーブがかった髪の間から見える耳が、赤い。
シャツ一枚の薄いへだたりから、彼女の体温が伝わってくる。
暖かくて、柔らかい。
「……あ、あの……」
「やっぱりドジですね、はなさん」
「え……」
「はなって呼ばれてるんデショ?」
「あ、はい……」
「ドジすぎて、イラッとするタイプですよね、ホント」
突き放すように手を離すと、急に体が寒くなった。
「……あの、ごめんなさい」
背中ごしに泣きそうな声が聴こえてきたけど、無視した。