第2章 02
マルコの隣に座って、額の布巾を変える。その時マルコとパッチリと目が合って、サッチは息を詰めた。
サッチ。マルコが名前を呼ぶ。
「俺は死ぬのか?」
「らしいな」
「そうか」
他人事のように返すサッチに、マルコも他人事のように返した。それもそうだ。病気なんて元は、赤の他人のような物なのだから。
2人は口を閉ざしたまま、明後日の方向を見続ける。マルコが何を思っているのか、サッチが何を思っているのか、互いに分からぬまま、時間だけが過ぎて行く。そんな中、砂を踏む音が響いた。
庭に目を向けると、が立っている。マルコが名を呼ぶが耳と尻尾をピンッと立てて、縁側に木の実を放り出し、逃げるように庭を駆けて行った。その後姿を、サッチはほうけながら見送る。
「サッチがいるから警戒してるよい」
「え、俺のせい?」
「それ以外に何がある?」
ニヤリと笑ながら言うマルコに、サッチは何だか肩の荷が下りた気がした。死を直前に別世界に行ったマルコが、戻って来た気分だ。
「なぁ。お前、もうすぐ誕生日だったな」
「え?……あぁ、そうだねい。すっかり忘れてたよい」
「よし、祝うか!」
サッチの言葉に、マルコの目が驚きで見開かれた。
もう人に祝ってもらうような年でもない。何だか照れ臭くて「止めてくれよい、ンな事……」と呟く。しかしサッチは、聞く耳を持たなかった。今は何だか、楽しい事をしたい気分なのだ。
マルコの誕生日に何を作ろうか?など考えると、自然に頬が緩む。そんな彼を訝し気に見詰めながら、マルコは静かに呟く。
「そういりゃ、の誕生日は、いつなんだろうな……」