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笑顔のバッドエンド

第6章 06


 目を覚ますと同時に走る痛みに、サッチは眉間に皺を寄せた。
 ズキズキと二日酔いで痛む頭を押さえながら、外を見る。日は随分と昇り、時刻は昼になろうとしている。
 なんとか身を起こして、サッチはとマルコを探した。ぐるりと室内を見渡せば、いつもの場所に人影が映る。だ。
「すっかり寝過ごしちまった。マルコは寝てるのか?」
 「へへっ」と笑ながら、に近付くサッチ。その間は返事どころか、身体さえも動かさない。
 不審に思い、サッチは再度の名を呼んだが、返事がないので彼女の背後からソッと覗き込む。そして小さく息を詰めた。
 は冷たくなって随分経ったであろうマルコを、大事な大事な宝物のように抱いていた。
「……逝ったのか?」
 サッチの言葉に、は静かに頷いた。
 親友の死を前にし泣くかと思っていたが、不思議と涙は出て来なかった。その代わり「お疲れさん」と言う言葉が、自然と口から漏れた。
 サッチはマルコを布団に寝かせると、箪笥を漁る。死化粧、と言うのはどう言うことをすればいいのか分からないが、取り敢えず死装束でも着せておけば大丈夫だろう。
 目当ての白い着物(よく寝巻きに使っていた物だ)を慣れた手付きで、マルコに着せる。その隣ではが生気のない目でマルコを見詰めるものだから、サッチは思わず「大丈夫か?」と問いかける。
 うん。は音もなく頷いた。
「お前、これからどうする?」
「……わからない」
「俺と一緒に来るか?」
「行かない」
 の言葉にサッチは「そうか」とだけ返した。何となく、そう言われる事を予想していた。
 しばらくの沈黙の後、思い立ったようにサッチは立ち上がる。離れから農具を引っ張り出し、ザクザクと庭に穴を開け、そこいらに転がっていた木材を地面に突き刺し、簡単な墓を作った。不格好だがマルコはまぁ、許してくれるだろう。
「最期、笑ってたよ」
 穴に収まっていくマルコを見ながら、は呟く。
 どこから調達したのか、野花をマルコの側に添えて、話を続ける。
「幸せ、って、笑いながら言った」
 だから私も幸せ。
 へらり、と笑ながら言うの頬に、一筋の涙が伝った。
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