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笑顔のバッドエンド

第1章 01


 ここへ来た時に己が泊まる部屋、厠、その他諸々。そう広くない家を探すが、マルコの姿は見当たらない。それでも必死に探し、最後に到達した台所で座り込んでいるマルコの姿を見て、サッチの肝は今までに感じた事のないほど冷えた。
「っマルコ!死んだのか!?」
「勝手に殺すなよい、阿呆ッチ」
 駆け寄ればそんな言葉が返って来て、詰めていた息を吐ける程度には安心した。
 隣に膝を付いて、サッチはマルコの様子を見る。顔に触れれば酷く熱いし、身体は全く力が入っていないのか、ぐてん、としている。すぐ側には吐いたのか、汚物が広がっていた。
 大方気分が悪くなって此処まで来たのはいいが、その後動けなくなったのだろう。
 サッチは大体の予想を付けると、マルコを抱き上げた。
 居間兼マルコの寝室まで戻って来ると、先程布団の中で眠っていたあの妖怪は、もういなくなっていた。縁側から見える庭には足跡が残っており、それは森の奥へと続いている。どうやら帰るべき場所へ帰ったようだ。
 サッチは布団にマルコを寝かし付けると、すぐに台所へと戻り濡れた布巾を持って来た。それをマルコの額に乗せてやると、マルコは軽く身じろぎ薄っすらと目を開く。そして掠れた声で呟いた。
「いたろい?この山の、主」
 突然の言葉に、サッチは呆気に取られ目を見開く。それからすぐに噴き出すと、マルコもクツクツと喉を鳴らした。
 粗方笑い終えると、布巾を更に濡らして「さっさと寝ろ」とマルコの額に押し付ける。マルコも笑い終えたのか、静かに寝息を立て始めた。それを見届けて、サッチは立ち上がる。
 これから医者を呼びに行くのに、山の往復。結構骨が折れるぞ。と、サッチは肩を鳴らした。
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